【訂正と解説】IntelとTSMCの「合弁会社設立」報道は誤報だった?公式声明と背景を整理

解説

はじめに:「合弁会社設立報道」は誤りだった?

2025年4月上旬、一部のメディアで「IntelとTSMCが合弁会社を設立する」との報道が大きな注目を集めました。
報道によれば、Intelの先端製造施設にTSMCが出資し、両社で共同運営を行うという内容でした。

しかしその後、TSMCは公式にその報道を否定しました。
本記事では、報道の流れと背景を丁寧に整理し、事実と誤解をクリアにしていきます。

詳細な否定声明はTSMCが2025年4月17日に行った決算説明会で明らかになりました。
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報道の内容:TSMCが出資し、Intelと共同でファブ運営?

当初報じられた内容によると、Intelが米国内に新たに設立する製造拠点の一部をTSMCが20%出資するというものでした。
さらに、米政府が主導する形で、米国内での先端半導体製造の自立性確保を目指す一環ともされていました。

これにより、「TSMCがIntelの製造部門に関与し、先端ノウハウを共有するのでは?」といった見方が一気に広まりました。


TSMC CEOが明言:「合弁会社の協議は一切していない」

しかし、4月17日に行われた決算説明会にて、TSMCのCEOであるC.C. Wei氏が明確に否定。
次のように述べました:

「我々はIntelとは合弁会社の設立について一切協議していません。技術ライセンス、技術移転についても同様です。」

このコメントは、メディアの一部が報じた内容とは真逆のスタンスを示すものであり、誤報であったことが明確になりました。


なぜ誤報が広まったのか?3つの要因

誤報がここまで拡散した背景には、以下のような要因が絡み合っていたと考えられます。

米政府の支援策と「意図的な連携模索」報道

Intelは2024年に約188億ドルの赤字を出し、製造面での巻き返しを迫られていました。
また米政府は、国内での先端半導体製造体制を強化すべくCHIPS法を通じ、補助金や税優遇を推進中です。

このような文脈から、「米政府がTSMCに働きかけているのでは?」という推測が広まりました。
それが「Intel × TSMC合弁会社構想」という誇張された形で独り歩きしたと見られます。

Intelへの外部支援が必要とされる状況

製造力でTSMCやSamsungに遅れを取っていたIntelにとって、外部の支援や共同運営は現実的な選択肢のようにも映りました。
この“必要性”が先行する形で、「TSMCとの戦略的提携が進んでいる」というストーリーに信憑性を与えてしまった側面があります。

一部メディアの憶測的報道

さらに、情報の一部が匿名筋から流れていたこともあり、検証不足のままニュースとして拡散された可能性があります。
大手メディアの一部も報道に乗ってしまったことで、“事実のように”認識されてしまったという構造です。

実際、これらの推測を裏付けるような報道が複数存在しました。
Silicon UKの記事で詳しく読む


TSMCの一貫したスタンス

TSMCはこれまでも、他社と技術を共有したり合弁で運営することには極めて慎重です。
実際に、米アリゾナ州での製造拠点「Fab 21」も単独出資で完全運営する方針を維持しています。

TSMCのFab 21に関する詳細な取り組みは、以下の記事でも触れられています。
Focus Taiwanによる報道

技術優位性を最大の強みにしてきたTSMCにとって、Intelのような競合他社と合弁を組むことは、ブランド戦略上もメリットが薄いと見られます。


今後どうなるのか?

現時点では、IntelとTSMCの間に合弁会社に関する正式な協議や構想は一切存在していません
ただし、米国政府の政策動向や両社の業績次第では、将来的に何らかの形で協業が生まれる可能性はゼロではないでしょう。

しかしそれが“合弁会社”という形式を取るかは極めて不透明です。


まとめ:誤報に流されない情報リテラシーを

今回の件は、業界を代表する企業同士の関係を巡る情報の不正確さがいかに大きな波紋を呼ぶかを示しました。

  • IntelとTSMCの合弁会社報道は、TSMCが公式に否定
  • 誤報の背景には、Intelの経営再建と米政府の政策的動きがある
  • 報道は“事実”として受け取る前に、一次情報での確認が重要

今後も半導体業界の動きは加速していきます。正確な視点でニュースを読み解く力がますます求められていくでしょう。

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